舞踏譜は詩のような言葉で書かれていますが、ひとつひとつが身体と空間の関わり方や五感や神経の張り巡らせかたなどをダンサーに対して具体的に指示する、「身体言語」となっています。
「舞踏花伝」で扱っている舞踏譜からその一つを読んでみましょう。
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耳の歩行
足下の床の大きな耳。その耳の軌跡に沿って歩く。
耳の曲線、傾斜、だんだん奥に向かって歩いていく。
と、今度は指の先に目が付いた。鼻も耳になっている。
耳の壁に沿ってずるずると歩く。背中にナメクジが這っている。
耳が耳の軌跡をたどっていく。奇妙な曲線。
遠くから物売りの声がする。これが耳にした最後の声だった。
鼻の先の耳、顎の下の目、股下からの目に動かされる。
手は無国籍に手の迷宮を辿っていく、何処までも。
ソロモン王宮に入っていく。
身体を使って踊るわけですけれども、身体が身体の中にいる情況を作っている、入れ子状態の舞踏譜です。
踊りには、お芝居のような「ここは真夜中の公園」「ここはお寺のお堂」「ここは居酒屋」などという具体的な場所設定があるわけではありません。しかし、「どのような空間が踊られているのか」はということは逆に大きなポイントとなるのです。
とてつもなく巨大な耳がそこにあるのか、自分がミクロマンのように小さくなって耳の中に入っていったのか、そのあたりはダンサー自身のとらえようにかかってきます。
耳の中を歩いている自分の指先が目になり、鼻が耳になる。ということは五感も狂ってきますね。指が目になった時にどう見え方が変わるのか?鼻が聞く音とは?
ソロモン王宮に入っていく、これはまた別の、これとつながる舞踏譜の題名です。次回にはソロモン王宮を読みましょう。
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